ペンギン日記(旧akoblog)

identityやprivacyに関心を持つ大学教員のブログ。20歳の頃から「ペンギンみたい」と言われるのでペンギン日記。

夫婦別姓≠旧姓使用?

大学時代の仲間達と話している中で、「旧姓使用と夫婦別姓は違う気がする」と言われた。どうやら、事実婚夫婦別姓だが、旧姓使用はそうではないということのようだ。

民法上、夫婦のどちらかが改姓しないと婚姻届は受け付けられないため、名字を変えたくないという夫婦は次の3つの方法を取るしかない。
一つには、婚姻届を出さない事実婚。「妻(未届)」の続柄を記載できたり、法律婚に準じた権利・義務が一部認められたりするものの、「籍が入ってないんでしょ?」という批判を受けやすい。その代わり、戸籍姓は変わらない。

二つには、上記で「別姓とは違う気がする」と指摘された、旧姓使用。そもそも1980年代に職場で旧姓を使えるように‥というところから、いわゆる夫婦別姓という言葉が生まれたという背景がある。ただし、純粋に便宜上旧姓、という場合には職場以外では旧姓を使わないので、ワーキングネームとそれ以外、という意識があるかもしれない。

三つには、戸籍姓を求められる度に書類上の離婚・再婚を繰り返すペーパー離再婚。元衆議院議員の水島広子さんがこの言葉を広めたように思う。

方法としてはこの3つに分類できるが、実はこの中でもさらに細かく分類できるのではないかと思う。
旧姓使用に関しても、 a) 仕事上のみ旧姓 b) 生活全般で旧姓 という区分けが考えられるだろう。また、a-1)仕事上戸籍姓を変えられない a-2)呼称のみ旧姓でかまわない ‥と言ったように分けられそうだ。例えば、企業の役員は通称を使うことができない。司法書士は事務署名を戸籍上のフルネームにしなければならず、呼称のみというわけにはいかないだろう。

仕事は旧姓、他は新姓、と割り切る人もいれば、仕事もプライベートも旧姓で暮らしたい(改姓したくない)が、やむをえず婚姻改姓、という人もいる。日常で旧姓を使い続ける苦労は相当なものだ。

きっと、仕事は旧姓、あとはこだわらないというのがスマートに見えるだろうし、周囲との軋轢も少ないのだろう。旧姓を使い続けようとすれば、「そこまでして?」と思われることもあるだろうし、「本当は新姓なのに?」ということもあるだろう。かといって、事実婚ならばさらに「そこまでするか!?」という抵抗感は強い。旧姓使用が浸透してきたゆえと思うが、却って「改姓したくない」という意識が異端視される気がしてならない。