ペンギン日記(旧akoblog)

identityやprivacyに関心を持つ大学教員のブログ。20歳の頃から「ペンギンみたい」と言われるのでペンギン日記。

夫婦別姓法案に反対とは、社会インフラの軽視ですか?

「亀井氏、夫婦別姓法案に反対を表明」
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/100127/stt1001271842008-n1.htm

民法を改正して、夫婦別姓を認めるメリットは、「税・社会保障IDといった社会インフラを整える」ことにある。男女差別だとか(法律上は夫・妻どちらの姓も選べますから)、どちらが望ましいというところに国が介入すべきではなく、制度のほころびを修正するための制度と理解すべきだろう。

夫婦別姓というネーミングの印象はあると思うが、この法案に反対ということは、すなわち戸籍制度(=現在の日本における身分登録制度)の軽視を意味している。

夫婦がそれぞれの旧姓を保持することに対して、賛成・反対を問うたところで、あと何百年経っても結論は出ないだろう。同姓であることに価値を見いだす人も、自分の生来の姓を男女と話図引き継ぐことに価値を見いだす人も、それぞれ価値観の違いでしかない。既に、以下の方法で夫婦や家族間で名字が違うという事態は発生している。

・兄弟姉妹のうち一人を、母方の祖父母の養子にして母の旧姓にする
・職場だけでなくあらゆるところで旧姓を使用する
・敢えて新姓への改姓を届け出ない
・結婚式を挙げても婚姻届を出さず、住民票上「妻(未届)」と記載する
・戸籍姓を求められるタイミングで、婚姻届と離婚届を交互に出す

これらはいわば、現状のルールに対する裏技だ。その結果、戸籍に記載される姓ではない姓を公式に用いたり、事実上婚姻関係にあり社会保障上は夫婦として扱われるのに戸籍上は他人となるなど、事実関係と登録情報がズレていく。

ただでさえ、日本には戸籍と住民票という二重の身分登録制度がある。これらの乖離を減少させ、「双方とも改姓せずに(夫婦別姓)、婚姻登録をしたい」という人たちの身分登録と実態を一致させることは、今後導入されるであろう「税・社会保障番号」など、社会インフラの下地を整える上で必須だ。

亀井さん、そこまでお考えですか?