ペンギン日記(旧akoblog)

identityやprivacyに関心を持つ大学教員のブログ。20歳の頃から「ペンギンみたい」と言われるのでペンギン日記。

戸籍を見たことありますか?〜夫婦別姓を考える前に

戸籍というものは、妙に神聖視される割に、正しく理解されていない。

結婚しても夫婦がそれぞれの姓を名乗り続けられる「夫婦別姓」について、最高裁憲法判断がなされることになった。ここ数日、Twitterを見ていると、いろいろな意見が出てはいるのだが、戸籍と住民票がごっちゃになっていたり、相続についても正しく理解されていない状況。

戸籍についてまとめておきたい。

まず、1994年から、戸籍は徐々に電算化、つまりデジタル情報としてコンピュータで管理されるようになってきた。それまでは、縦書きの書類で、結婚や離婚、死亡などで除籍になると × がつけられた*1。2004年には、各自治体に戸籍手続オンラインシステムの構築のための標準仕様書が配布された。こうして、現在、多くの自治体では横書きの戸籍になっている。

調べてみたところ、電算化戸籍の際に、既に夫婦別姓の導入は織り込まれていたようだ。

『戸籍』(全国連合戸籍事務協議会) Vol.770 (平成17年3月号)
「戸籍事務のIT化」(金井智洋) p23-
平成元年 そのまま移す平成2年 項目化
平成4〜5年 将来夫婦別姓が実現したことを見越して「母の氏」を省略しない。
平成8年頃 夫婦別姓の実現機運が盛り上がった

そして、これが現在の戸籍全部事項証明(かつての戸籍謄本)。

ぱっと見ると、フグ田マスオと磯野サザエが別姓で結婚したかのようにも見えてしまう。配偶者氏名には、旧姓の氏名が記載されるのだ。もちろん、戸籍筆頭者が「フグ田マスオ」になっているので、この戸籍に記録されている人(名のみが書かれている)の氏は「フグ田」であることが前提なのだが。

もう一つ大事なのは、父母についての記載だ。かつての縦書き戸籍では、父母が婚姻中なら、父は氏名、母は名のみ。父母が離婚していれば、両者はフルネームで書かれていた。そのため、戸籍を見ると父母の婚姻状況が分かってしまう。現在の戸籍では、父母はフルネーム。この後、仮に父母が離婚し、母が旧姓に戻ったとしても、それは反映されない。あくまで出生時の父母の氏名が書かれるだけだ。

夫婦別姓にすると、戸籍が壊れるとか、システムを変えるコストがかかるという声があるが、現在の戸籍を見る限り
そうした心配は杞憂で、むしろ名字が違っていても吸収できるようになっているのではないか、と思う。敢えて言い換えれば、名字が違う家族がいたところで、戸籍制度から漏らさないための素地はありますよ、ということだ。

*1:離婚をバツイチというようになったのもそれが由来だが