ペンギン日記(旧akoblog)

identityやprivacyに関心を持つ大学教員のブログ。20歳の頃から「ペンギンみたい」と言われるのでペンギン日記。

身分登録の問題として民法改正(夫婦別姓)案を考える

夫婦別姓導入へ…政府、来年にも民法改正案
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20090927-OYT1T00001.htm
(2009年9月27日03時01分 読売新聞)

以前このブログでも「夫婦別姓の民法改正案が通らない4つの理由」として執筆したが、夫婦がそれぞれの姓を保持したまま婚姻届を出すことを認める民法改正案、いよいよ実現の見込みが出てきたようだ。

賛成と反対が対立する議題だ。無関心な人も多い。だが、これは家族観という価値観で判断すべき問題ではなく、身分登録の整合性を取るという意味で検討すべき問題だ。別姓の是非を問うまでもなく、姓を保持したいと考えている人は、既にいろいろな工夫を重ねている。旧姓と戸籍姓のダブルネーム。戸籍上は独身だが、住民票上では「未届」の配偶者。身分や名前の登録と現実は、すでにかけ離れている。これを、できるだけ現実に即した形にしようというのが、夫婦別姓を認める民法改正案だ。


同じ姓を名乗ることによる一体感。姓を変えることによる気持ちの切り替え。長らく習慣として受け継がれてきたことなど、いろいろな理由から今まで通り同姓(多くの場合は夫の姓)で婚姻届を出す人は、多数派であり続けるだろう。結婚に伴って改姓をすることに、意味を見いだすという価値観はそれはそれで大切にすべきだと思う。

が、生まれたときの姓を保持するという気持ち。結婚に伴って両方の姓を引き継ぐということ。など、改姓をしないことにも意味があり理由がある。この価値観の違いを「こうすべきだ」と決めることはナンセンスだ。

むしろ、身分や名前の登録が現実と乖離している状況を修正するために、民法を改正するのだと考えるべきではないだろうか。

先に書いたように、旧姓を通称として使ったり、「妻(未届)」と住民票に表記される事実婚を選ぶなど、姓を変えたくない人はリスクを取ってきた。
そこまでのことをして、家族であろうとし、かつ名前を保とうとすることに対して

名字を変えないなら結婚しなければいい

という反対論は、何ら説得力を持たない。

ちなみに、女性だけの問題ではないことにも注意。サイボウズ社長の青野氏のブログ記事「夫婦別姓制度」や、産経新聞の金曜討論の記事をご参照されたし。