ペンギン日記(旧akoblog)

identityやprivacyに関心を持つ大学教員のブログ。20歳の頃から「ペンギンみたい」と言われるのでペンギン日記。

OASIS Workshopにて発表

(このエントリは後日書いています)

上海国際会議場へ。ホテルから歩いて15分弱。横断歩道に信号などなく、うまく車道を頃合いを見ながら渡るしかない。

ICIS本会議前には、様々なWorkshopが開かれる。IFIP8.2OASIS Workshopに参加した。このOASISは、2005年に初参加したときから断続的に参加している(毎年Business Meetingに参加しないとMemberの資格を保持できず、Friendになってしまう)。今年は、(1) ラウンドテーブルで議論をするセッション と (2) 通常の研究発表 の二つがあった。それぞれに自分のテーマを投稿した。

まずは朝イチで、Round Table Session。ここでは、近頃考えている「実名とは何か?」を持っていった。

"What is your definition of “Real Name” on Social Media?"
Akiko Orita

本人到達性(本人を特定できるかどうか)と、リンク可能性(同一人物と分かるかどうか)の二軸で、これまで実名・仮名・匿名と分類してきたが、果たして実名・仮名を分けるものは何か?というのが私の疑問だ。このセッションには欧州の人たちが殆どだったが「ブログでは名前を使い分けている。本名を使うものもあるけれど」という意見がちらほら。ただ、本名とそれ以外という区別はあるものの、本名よりも仮名の方が「有名」になってしまう場面は想像しづらいようだ。ここにIDの保証レベルを関連させようとすると、まだ話が共有できるレベルにならない。と、いう難しさを感じたセッションだった。

次のセッションでは、ケネソー州立大学でマンガ教材を使った授業を行った報告。

"Practical IS-Education using MANGA"
Akiko Orita, Atsushi Yoshikawa and Takao Terano

たとえば「オフィス」と言ったとき、アメリカの学生が思い浮かべるキュービクルと、私が想定している大部屋は違う。こうした背景の違いをあれこれするより、いったん描画で共有しておいて、その上で議論することで、共通点と相違点を浮かび上がらせることができる、という可能性について報告した。このマンガ教材が、「読んで分かる」もの(いわば分析をした事例ケース)とは違い、「問いと組み合わせて意思決定するもの」(いわば教材ケース)に近いものだ、ということは、幸い理解された模様。イスラエルの大学の方が興味を持ってくれた。

OASISのセッションは全体的に、今回はかっちりした発表が多く、さながらICIS本会議に近い雰囲気だった。RQがあり、メソッドがあり、仮説があり、モデルがあり、分析がありと、殆どの研究がお作法通りというか、型通りに進んでいる。私のは報告だったし、他にも少し枠を外したものもあったが、おとなしい研究が多かったかなあという印象だ。