ペンギン日記(旧akoblog)

identityやprivacyに関心を持つ大学教員のブログ。20歳の頃から「ペンギンみたい」と言われるのでペンギン日記。

「起業したいが税金は払いたくない」という学生

夕方からはパネルセッション。寺野先生もご登壇された。ホールには学生も多数集まっている。

一人、エーゲ海大学の先生が熱っぽく語っていた。ギリシャにはまだ余力がある。そこら中にオリーブの木があって、実がなるままになっている。そのままにしているでしょう?これをオリーブオイルにして、きれいな瓶に入れて、EUの空港で売ったらどうか?ギリシャのワインだって、こんなに美味しいのに、ヒースロー空港に並んでいるのを見たこともない。私たちは持っているものを、もっとビジネスにしていくことができると。
この先生は、学部生にも分かるようにかみ砕いて話をされていた。人は変化をおそれるものだ、だから変化に対応して自分から何かを変えていくのが難しい、なども。

それに対して、学生から出た質問はこうだった。「起業したいと考えていますが、こんなに高い税金を支払いたくないんですが、どうしたらいいでしょうか?」
先生は、それならばギリシャにこだわることもない、外にでたっていい。そして、良い物を作れば買ってくれる人がいる。売れれば税金を払うのがどれほどのことか。まずは、魅力的なものを作って売ることを考えなさいと答えていた。

学生が後ろ向きだなあというのが、私の第一印象だった。しかし、後日、消費税23%というレシートを見て、さもありなんと考え直した。普段の生活でそれだけの高い消費税を払っていること自体、消費税5%の国に住んでいる私とは感覚が違うはずだ。それにしても、確かに美味しいオリーブが放置されているのはもったいない。。もっと売れるはずなのに。彼らにしてみれば、自分たちに十分なものがあればそれでいいのかもしれない。これはこれで、幸せな形かもしれない。身の丈で暮らしていく分には十分なはずが、いつの間にか粉飾が見つかり債務を抱える国になってしまったギリシャの現状。新鮮で美味しいものを食べて、自分たちのためのワインを飲み、必要なオリーブだけ食べて、それでいいじゃないかと言いたくもなった。

パネルは白熱して、予定時刻を大幅にオーバー。夜のレセプションは22時から。さすがに早退させていただいた。