ペンギン日記(旧akoblog)

identityやprivacyに関心を持つ大学教員のブログ。20歳の頃から「ペンギンみたい」と言われるのでペンギン日記。

旧姓使用の経緯

  • 1988年:図書館情報大学の教授・関口礼子氏がが職務上旧姓を使うことを希望したにもかかわらず戸籍姓を強制されたことに対して、大学を提訴。1993年に東京地裁で敗訴し、1998年に和解。

(参考:日経ウーマンONLINE 仕事での「旧姓使用」を求める女性教員が戸籍名を強制する大学を提訴

5.科学研究者が旧姓を継続して使用することを保障する

を提示。後に2000年には「女性科学者の環境改善の具体的措置について」(PDF)において次のように申し入れた。

8.公私の別なく、研究者が自ら希望する名称(旧姓、通称名など)を使用できるようにすること。

また、科学研究費補助金の申請における旧姓・通称表示の取扱について、研究に係る通称使用をより広く認めるべきとの意見が高まってきていることなどから、今回の交付申請から、旧姓や通称のみによる申請を可能にすることとした。

1 各府省は、2に定める文書等に記載された職員の氏名について、当該職員から旧姓使用の申出があった場合、旧姓の記載を行うこととする。
2 本申合せに言う「文書等」とは以下に掲げるものをさす。
(1)職場での呼称(2)座席表(3)職員録(4)電話番号表(5)原稿執筆(6)人事異動通知書(7)出勤簿(8)休暇簿

旧姓使用の前提

  • 民法第750条「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する」
  • 2015年6月現在、民法は改正されておらず、選択的夫婦別姓は認められていない
  • 2005年時点で96.3%の夫婦が「夫の氏」を選んでいる

厚生労働省 平成18年人口動態調査「婚姻動向の多面的分析」

旧姓使用について

先日の経営情報学会2015年春季全国研究発表大会で、「ソーシャルメディアと旧姓使用」というタイトルで研究発表をしてきた。ここ数年、科研費研究で「実名とは何か」を追いかけているが、その中で「旧姓はどういう位置づけになるのだろう?」という疑問が出てきた。いわゆる戸籍上の氏名ではない。だけど、かつては戸籍上の氏名だった。人によっては、むしろ旧姓の方が本来の名前で、戸籍上はやむなく変えた名前という人もいる。発表予稿を書く際に調べたことを基に、改めてブログにまとめておきたい。出典、参照先も入れ込んだので、資料としてご活用いただければ。

戸籍を見たことありますか?〜夫婦別姓を考える前に

戸籍というものは、妙に神聖視される割に、正しく理解されていない。

結婚しても夫婦がそれぞれの姓を名乗り続けられる「夫婦別姓」について、最高裁憲法判断がなされることになった。ここ数日、Twitterを見ていると、いろいろな意見が出てはいるのだが、戸籍と住民票がごっちゃになっていたり、相続についても正しく理解されていない状況。

戸籍についてまとめておきたい。

まず、1994年から、戸籍は徐々に電算化、つまりデジタル情報としてコンピュータで管理されるようになってきた。それまでは、縦書きの書類で、結婚や離婚、死亡などで除籍になると × がつけられた*1。2004年には、各自治体に戸籍手続オンラインシステムの構築のための標準仕様書が配布された。こうして、現在、多くの自治体では横書きの戸籍になっている。

調べてみたところ、電算化戸籍の際に、既に夫婦別姓の導入は織り込まれていたようだ。

『戸籍』(全国連合戸籍事務協議会) Vol.770 (平成17年3月号)
「戸籍事務のIT化」(金井智洋) p23-
平成元年 そのまま移す平成2年 項目化
平成4〜5年 将来夫婦別姓が実現したことを見越して「母の氏」を省略しない。
平成8年頃 夫婦別姓の実現機運が盛り上がった

そして、これが現在の戸籍全部事項証明(かつての戸籍謄本)。

ぱっと見ると、フグ田マスオと磯野サザエが別姓で結婚したかのようにも見えてしまう。配偶者氏名には、旧姓の氏名が記載されるのだ。もちろん、戸籍筆頭者が「フグ田マスオ」になっているので、この戸籍に記録されている人(名のみが書かれている)の氏は「フグ田」であることが前提なのだが。

もう一つ大事なのは、父母についての記載だ。かつての縦書き戸籍では、父母が婚姻中なら、父は氏名、母は名のみ。父母が離婚していれば、両者はフルネームで書かれていた。そのため、戸籍を見ると父母の婚姻状況が分かってしまう。現在の戸籍では、父母はフルネーム。この後、仮に父母が離婚し、母が旧姓に戻ったとしても、それは反映されない。あくまで出生時の父母の氏名が書かれるだけだ。

夫婦別姓にすると、戸籍が壊れるとか、システムを変えるコストがかかるという声があるが、現在の戸籍を見る限り
そうした心配は杞憂で、むしろ名字が違っていても吸収できるようになっているのではないか、と思う。敢えて言い換えれば、名字が違う家族がいたところで、戸籍制度から漏らさないための素地はありますよ、ということだ。

*1:離婚をバツイチというようになったのもそれが由来だが

2014年もお世話になりました

非常に慌ただしい年末年始を迎えておりますが、年が変わるのでエントリを。

・専任教員2年目:関東学院大学に着任して2年目。ゼミにて卒論指導が始まり、ゼミ生の学会発表、ゼミ合宿といった学生指導の機会が増えてきた。学会で、学生たちが、私の師匠から質問を受けたときは非常に緊張した(汗)。そのほか、諸々の学務や、大学の未来ビジョンづくりに関われたのは勉強になった。大学という場について考え、手を動かす機会だった。

・研究活動:取りまとめるフェーズだったと思う。プライバシーと名乗りについての解説論文を書いたほか、書籍の分担執筆も。ゼミ生たちの研究テーマに一緒に取り組んで行く意味では新しいテーマも見つけられたが、自分に関してはもう少し時間を割きたい。海外へはIIWに一度参加したきりになってしまった。

・プライベート:11月に第二子を出産。10月下旬から産休に入り、3月に復帰予定。産後休業は、寝ない赤子相手の毎日・・それで慌ただしい年末年始となりました。今回はつわりもつらく、梅雨〜初夏の頃はいろいろな方のフォローをいただきました。感謝です。

一年間お世話になりました。

「アナと雪の女王」は心地よかった

明日の紅白歌合戦でもLet it goが歌われるようだし、今年は各所で「アナ雪」の評判を聞いた。男性に頼らないヒロイン像といった評価も多かったようだけど、どうもそれだけでは説明しきれない気がする。それに、アナ雪に登場する男性たちは頼もしいし魅力的だ。ハンス王子だって、本人なりの悩みがあってあのような行動に出たんだろうと思えるほど。頼らないとか自立とか、そういう大仰なもの以前に、細かいところでちゃんと作られてた映画だと私は感じたのだ。

アナ雪は、女子がストレスなく観られる映画だったと思う。

いわゆる「助けられるだけのお姫様」という形にはめられることもなく、男性キャラとは互いに助けたり助けられたりの場面があり、それでいてドレスを捨てたり断髪したりして男になろうとしなくてもいい。ちょっとやだな、というひっかかがなく観られたのが、私にとっては心地よかった。無理矢理切り開いたりしなくても、細部において「男(女)はかくあるべし」的なジェンダーの縛りがないことが。

そりごと落ちかけたクリストフを、とっさにアナが助けるシーンもよかった。女の子が男の子を助ける、その逆もある、というのが目に見えるのはよかったな。

ディズニーではムーランも好きだったけど、女であることを隠さなくちゃいけない前提は、自分はちょっと息苦しくなってしまう。当たり前の場面にストレスがない、それを小さいころから目にすることができる今の子どもたちが、ちょっと羨ましくもなった。

「金もうけ」疑いの出版社からメール

AASCITというところからメールが来た。
そもそも、宛名の書き方がおかしいので、近頃話題になっていた「ハゲタカ出版社」のリストを参照。

単なる“金もうけ”の疑いのあるオープンアクセス出版社のリスト(2014年版)
http://current.ndl.go.jp/node/25205

Potential, possible, or probable predatory scholarly open-access publishers
http://scholarlyoa.com/publishers/

リストに入っていたので無視することに。
査読依頼の他、投稿募集がきたときも、リストで確認するのがよさそうだ。

Dear Orita, A. ,

AASCIT is seeking individuals with diverse areas of expertise to serve as peer reviewers or editorial board members to evaluate papers submitted to AASCIT journals. The peer review process used by AASCIT enhances the efficiency and maximizes the quality of the paper.

After reading your article Is that really you?: An approach to assure identity without revealing real-name online published in Proceedings of the ACM Conference on Computer and Communications Security, our Editorial Board speak highly of it and think you are qualified to be a Reviewer or Editorial Board Member in our journals to review papers. Now, we sincerely invite you to join us serving as a journal Reviewer or Editorial Board Member and you will get below benefits:
1. Publish your own papers with certain discounts in our journals.
2. Enriching your knowledge and broadening your horizon by reading others’ papers.
3. Get a certificate.

A reviewer's responsibilities include reviewing manuscripts for clarity, accuracy, and research rigor; identifying the strengths and weaknesses of manuscripts and so on. For more details, you can visit: http://www.aascit.org/journals/callforeditorial

You can also visit our journal page to check the journals in which you are interested. http://www.aascit.org/journals/list

If you are interested in becoming a Reviewer or Editorial Board Member, please submit your application through our online system: http://www.aascit.org/common/login

We are looking forward to your participation.