ペンギン日記(旧akoblog)

identityやprivacyに関心を持つ大学教員のブログ。20歳の頃から「ペンギンみたい」と言われるのでペンギン日記。

Gender&IT 2018に参加

ドイツのハイルブロンで開催された Gender & IT 2018に参加し、ポスター発表をした。

gender-wissen-informatik.com

この会議、昨年秋10月末が投稿〆切だったが、投稿者も他の投稿の査読を行うというものだった。1本あたり2名の査読者+1名のメタ・レビューアがつく。提出しほっとしたのもつかの間、私も3本のPaperを査読しコメントを書いた。

12月に査読結果で「条件付き採録」となっていたが、査読コメントが非常に丁寧で、特にメタ・レビューアからは関連分野の論文リストもつけてもらった。ここからCamera Readyを出すまで2か月。じっくり直して再提出してねという話である*1 実際、今回は追加の論文も読んだし、考えたし、初稿以上に時間をかけて第二稿を書いた。

投稿者同士がレビューするということは、この分野に関心が高い人達のレビューになるわけで、私もかなりコメントを丁寧に書いたし、私がもらったコメントも丁寧だった。このときから既に、早く会議で発表見たいという気持ちが高ぶってくる。いい案だと思った。

 

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会議の参加者は100名強。投稿数は55本、Long Paper19本 Short Paper (Poster) 20本が採択となったとのこと。女性の参加者、そしてアカデミアの参加者が多かったが、もちろん男性も産業界の参加者もそれなりには見かけた。ただ、アジア人は私一人だった。そのせいか「この会議のためだけに来たの?!」と何度か聞かれてしまった。いや、何かのついでという方が難しいし・・このくらの規模の会議は、しっかり議論できるのでむしろ来る意味があるわけだが・・。

 

発表内容、扱われるトピックは多岐に渡っていた。全体を見ると、とてもざっくり言えば、性差で二分することへの疑問と、性差を無視することへの疑問、両方が議論されていたと思う。生物としての性は、例外はあれど男女で二分できるけれど、いわゆるジェンダーは、たとえば男子だから女子だからと二つだけに分けて扱ってよいのかという話だ。一方、たとえば自動運転車の座席の設計には、性差を考慮すべきでは?という発表もあったのだが、性差をないものとする、そしてそもそも男性を基準としているものを見直すべきれはないかという話だ。

男性や女性に対して暗黙に持っているStereotypeについても、結構顕著に出てきている例があった。ポスター発表だったが、ロボットに名前を付ける実験の結果、従来女性の仕事(お世話をする)と思われたことをするロボットには女性名がつけられる傾向があったという。

私がポスターで発表したのは、"What is your "formal" name?" 。従来はオンラインでは自由に名前を名乗れた。今はリアルな生活を反映させるSNSが普及して、現実の社会的なコンテクストやアイデンティティをそちらにも反映せざるを得ない。特に、結婚改姓しつつ旧姓と戸籍姓の二つの名前を使う人はどうなのかというのを、年賀状の話とFBの話を並べて示した。が、まず前提で「日本では夫婦同姓の選択肢しかない、別姓も結合姓も不可」で驚かれてしまう。その上で、そのSocial Normがオンラインにも及ぶのだろうかとか、逆に自由に名乗ったとしても例えば死亡時にどうやって本人確認する?など、ポスター発表の時間を超えてたくさんの話ができた。

なお、この会議ではregistration時に写真の可否・Twitter掲載の可否を聞かれた。NGの場合、名札に色付きシールが貼られる。分かりやすくてよかった。

2日間の会議だったが、2パラレルでみっちり。ランチやディナーでも話せたし、ポスターは貼りっぱなしなのでセッション外でも話すことができた。名刺交換した相手からは、ホテルに帰るとすぐにLinkedInのInvitation。便利になった。

*1:あとはACMのフォーマットにするのに皆苦労したというのもある。