ペンギン日記(旧akoblog)

identityやprivacyに関心を持つ大学教員のブログ。20歳の頃から「ペンギンみたい」と言われるのでペンギン日記。

ビッグデータ活用でも「30代・女性」から脱却できないのだろうか?

日経ビッグデータの8月号のケーススタディを読んでいて、いくつか違和感を覚えたのでメモ。今月号ではJR東日本ウォータービジネスが取り上げられている。
エキナカ自販機acureの事例だ。前半は気温データとの組み合わせでホット飲料への切り替え最適期を見極める話で、こちらはふむふむと読めた。

後半、SuicaSuicaポイントクラブの会員情報から得られたデータとの組み合わせから、データ活用の可能性について書かれているのだが。。。「夕方に甘い飲料を購入しているのは女性よりも男性」「夕食前に小腹を満たしたいという男性のニーズが」(記事p.13 より)という件に、強い違和感を覚えてしまった。
夕方に甘い飲料を購入している人がいるという事実。小腹を満たしたいのかもしれないという推測。夕方に甘い飲料を売ることを考えようというのならば分かる。が、ここで性別を入れる意味は?

SuicaのIDと掛け合わせることによって、売れ筋の正確な予測やおすすめ商品を表示することについても書かれていたが、性別年齢の属性なくとも、同一人物であることだけとれれば十分では?「夕方に甘い飲料を購入している」【人】(老若男女なんであれ)に、欲しがっているものが届けばいいという話に思えるが、よく読むと、自販機の前に立つ人の顔認識から性別・年齢を取ってお勧めする話だからなのか。

そうなると、SuicaのIDをかざす意味はどうなるんだろう。「夕方にコーンポタージュスープを飲む傾向がある男性」が居たとして、その購買履歴がIDに紐付いていたとして、それでも「男性だし、夕方だし、甘いものをおすすめする」なんて運用になるのだろうか?(ここまでは書いてないので私の妄想にすぎないが)。

Facebookでコメントもいただいたので、ここで追記。すべてのSuica IDと購買履歴がひもづけられるのではなくSuicaポイントクラブの会員だけですね。会員でなければ、現金で支払おうとSuicaで支払おうと、顔認識のお勧めになるという。

ビッグデータの活用、といった時に、どうしても従来の性別・年代カテゴリでくくられることに、もったいなさともどかしさを感じる。「30代女性(の多く)は甘いカフェオレをよく買っている」というデータにもとづいて、30代女性であれば甘いカフェオレをひたすらお勧めするのはあまりにもったいない。仮に、30代女性の(a)8割は甘いカフェオレ、(b)2割は甘くないカフェオレ、30代男性の(c)3割は甘いカフェオレ、(d)7割は甘くないカフェオレを買っているというデータがあったとすれば、(b)と(c)の人も幸せになれるオススメを提示できるのが、データ分析の可能性だと私は思うのだが。

「あなたは30代女性だからこれが好きなはずだ」と、カテゴリに入れられた上で何かを勧められるのではなく、「あなたはこれをよく買っているから、次はこれはどうですか?」と、自分個人の行動にもとづいて何かを勧めてくれるなら、ビッグデータありがたいなと思えるかもしれない。

8月15日追記:
今日見つけた、GLOCOM中西さんによるこの記事「これまでの常識をくつがえすビッグデータ分析シリーズ 〜第一回:常識にとらわれない発見で売り上げ増加〜」は非常にしっくりきた。

常識と思っている枠組みを超えられる可能性がおもしろいと思うんだよなあ。