ペンギン日記(旧akoblog)

identityやprivacyに関心を持つ大学教員のブログ。20歳の頃から「ペンギンみたい」と言われるのでペンギン日記。

知識共有コミュニティワークショップ

(※この日記は以前作成したメモを元に12月に公開しましたが、日付は開催日にしました)

ヤフー株式会社と情報社会学会の共催ワークショップを、JICA地球ひろばで開催した。会場はとても広く、大きなプロジェクタとワイヤレスマイクを使うことができた。あとは電源の確保とWifi提供を主催者が考えればネット系の研究会としてもよい場所にできたのかもしれない。ともあれ、まずは朝からヤフーの皆様のご協力をいただいて設営。

午前のセッション。まずはヤフー株式会社のウ・ナリ氏による知恵袋についてのご発表をいただいた。いわゆるFAQとQ&Aとの違いに始まり、知識を体系的にデータベース化することの重要性についてお話いただけた。続いてネットレイティングスの萩原雅之氏からソーシャルメディアの概観についてご講演。日本のユーザの推移グラフはきれいに右上がり。知識共有がマーケティングに与えて影響については、AIDMA/AISASモデルに沿ってさまざまな事例が紹介された。なんとなく理解している気になっている事柄を、とてもわかりやすく整理していただけたように思う。

続いて研究発表セッション。

大平雅雄, 松本真佑, 伊原彰紀, 松本 健一(奈良先端科学技術大学院大学
「オープンメディアを活用した知識コミュニティのデザインに関する一考察」

村田 剛志, 森保 さき子, 池谷 智行 (東京工業大学
「社会ネットワークとしてのYahoo!知恵袋

最初の発表では、クラスタリング係数から信頼を考察する試みがなされた。異なるプラットフォームにおける情報交換は、単純な比較は難しいものの、生きているデータをそのまま使うという新鮮さを感じた。Yahoo!知恵袋にも「まとまり」というものはあるのだろうか?ということについて考えさせられた。

次の発表は、リンク予測という方法によって知恵袋のデータを視覚化するという試み。より幅広い話題と、限られた参加者による話題の違いを俯瞰することができた。

磯貝直毅, 西村涼, 渡辺靖彦, 岡田至弘(龍谷大学
「Q&Aサイトへの質問の作成を支援するための情報の抽出」

佐藤弘樹, 島田諭 (筑波大学), 福原知宏(東京大学), 佐藤哲司(筑波大学
「コミュニティの活性度評価に関する一検討」

午後イチのセッション。最初の発表は、質問者が「質問」する際にどのようにしたらいいか、支援するためのツールについて。これは「誰にとっての」支援なのか、また実装に組み込むとしたらどうなるのかという議論につながった。

次の発表は、コミュニティの活性度を数値化するというもの。この指標ははたしてweb全体に適用できるのか否か、できないとすれば何が知恵袋を特徴づけているのかという議論となった。

石下 円香, 佐藤 充, 森辰則 (横浜国立大学
「任意の型の記述的回答が可能な日本語Web 質問応答システム」

島田諭(筑波大学), 福原知宏(東京大学), 佐藤哲司(筑波大学
「キーワードの網羅性を用いた包括的ウェブナビゲーション」

午後二番目のセッション。前者の発表ではQ&Aコーパス分析、後者の発表ではキーワードと網羅性についての発表がなされた。これに関しては、私は専門外で解説はうまくできそうにない。

最後のセッションは、私がモデレータを務めて「インタラクティブ・セッション」という形で実施した。この形は、以前DAS-P2P2008(Finland)でTalking Circleとして実施したものとほぼ同じ。パネリストを置かず、最初にモデレータが話題を提供した後は、話者が次の話者にパスしていくという方式でディスカッションを進めていくというものだ。冒頭でセッション全体のサマリと論点を投げた後、会場は大変に盛り上がった。

ああ、ロガーを用意しておけば全部記録にのこせたのに!

覚えているキーワードだけをメモすると、
正しい評価(reputation)とは何か/他人に対して質問を気軽にできるとはどういうことか/知識と情報は区別されるべきか/知識共有コミュニティは図書館に似ている/投稿のしやすさと信用の担保について/…

1時間ではまるで足りない議論を終えて、懇親会でも大変楽しくお話することができたように思う。早速次回の開催案もでてきたが、これはまたおいおい。

最後になりましたが、今回の開催に向けて多大なご協力をいただいたヤフー株式会社に感謝を申し上げます。