ペンギン日記(旧akoblog)

identityやprivacyに関心を持つ大学教員のブログ。20歳の頃から「ペンギンみたい」と言われるのでペンギン日記。

夫婦別姓法案が参院に提出された。

野党3党 夫婦別姓法案を提出(4/22 NHKニュース)
http://www.nhk.or.jp/news/t10014141721000.html

1996年に法制審議会が選択的夫婦別氏制度を含む「民法の一部を改正する法律案要綱」を答申して以来、何度野党が提出しても、審議すらされずに廃案になってきた。「家族の一体感が損なわれる」「離婚が増加する」「子供がかわいそう」などの反対意見に対し、夫婦別姓を希望する人たちの理由は、職業上の理由、祭祀の理由、アイデンティティから来る理由など多岐にわたるために、説得力がないとみなされたのかもしれない。

たなざらしになった結果、何が起きたか。1996年当時は夫婦が別の苗字を名乗っていること自体への抵抗感もあったけれど、今では「見かけ上」の別姓夫婦は確実に増加している。公務員の旧姓使用をはじめ、職場での旧姓使用の範囲は広くなったし、大学や研究費の申請でも旧姓を使える範囲は広くなった。一方で、「妻・夫(未届)」と住民票に記載できることが周知されるようになり、事実婚を選ぶ夫婦もじわじわと存在を増やしている。つまり、夫婦別姓を希望する人たちは、現在の法律の中でできる工夫を重ね、自己責任で自分の希望する状態を作り上げているというわけだ。

この状態は必ずしも好ましくない。旧姓使用は、常に戸籍姓との照合性が求められるし、戸籍姓でなければ使えない場面がある。事実婚は子を非嫡出子にしたり、相続や税制の不利益も発生する。こういう「裏ワザ」じゃなく、ちゃんと夫婦がそれぞれの苗字のままで婚姻届を出し、婚姻関係を登録させてください、というのが夫婦別姓法案(民法改正)。

高市早苗議員は、前述の規制法案については政治の不作為を心配しているが、夫婦別姓は反対。あくまで通称使用にとどめよとおっしゃる。戸籍上、夫婦が同姓であることが好ましいという価値観だ。

夫婦が同じ姓を名乗りたいという気持ちも、それぞれの姓を引き継ぎたいという気持ちも、同様に自分の家族や苗字のことを考えた結果であって、尊重されるべきだ。夫の姓を名乗る女性は従属的なわけではないし、改姓したくないという女性が家庭を軽んじているわけでもない。まさに、家族というものに対する「情報の取捨選択や主体的な判断といったリテラシー」こそが必要だろう。