ペンギン日記(旧akoblog)

identityやprivacyに関心を持つ大学教員のブログ。20歳の頃から「ペンギンみたい」と言われるのでペンギン日記。

青少年ネット規制法

昨日から今日にかけて、私が強い関心を持っている法案がニュースに上がってきた。ちなみに、私もWIDEプロジェクトの一員だし、こちらの声明文には個人としても賛同している。
(これについては ITmediaのブログ(Empowerment Blog)にも書いた)

まずは、いわゆる「青少年ネット規制法」(青少年に有害な内容のサイトの閲覧を規制する法案)。

「青少年ネット規制法に反対します」――MIAUとWIDEプロジェクトなど共同声明
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0804/22/news116.html より

 規制は青少年の成長にとってもマイナスと指摘。「青少年が『有害な』情報に全くアクセスできない状態で成人すると、情報の取捨選択や主体的な判断といったリテラシーを学ぶ機会が失われる。興味本位で『有害情報』サイトを作成する青少年や、成人してから多くの犯罪に巻き込まれる“情報弱者”の18歳が生まれるだけではないか」と危ぐ。「小学生から情報リテラシー教育を行い、“ネットの歩き方”を体得させることがより優れた手段では」と提案する。

もちろんこれは、「青少年が犯罪に巻き込まれないように努力するという社会的・倫理的な必要性をとても強く認識している」(同声明)という前提あってのこと。「情報の取捨選択や主体的な判断といったリテラシー」を学ぶことを重視するということは、青少年を含めた個人を信用し、その個人が自ら学び、判断する力を持つことが長期的な効果につながることだと、私は理解している。

同じ言葉であっても、文脈によって意味は変わるわけだから、これを機械的にフィルタしてアクセスできないようにしよう、というのはあまりに乱暴だ。文脈や隠語も理解して、本当に「有害」なコンテンツだけをフィルタする仕組みは、現実には作ることはできないだろう。文章や会話というものは、単語だけではできていないし、言葉が刈られればいくらでも隠語は生まれてくる。

むしろ必要なのは、どんな言葉や表現であっても、そこに他人を貶め、傷つける意図があってはならないという意識であるし、傷つけられないためにどのように情報を取捨選択するかというリテラシーであろう。「有害」サイトへのアクセスをブロックする法案を作る、というのは、こうして自己の判断と学びによって成長する可能性を否定されたようにすら感じられる。

自主規制では不十分」青少年ネット規制民法案、高市早苗議員に聞く
http://it.nikkei.co.jp/mobile/news/index.aspx?n=MMITzx000006042008&cp=1 より

自民党内でも自主的な取り組みに任せるべきだという意見もあるのは確かです。ただ、実際に携帯サイトをきっかけとした犯罪が後を絶たず、昨年の内閣府世論調査でも9割以上が有害情報を規制すべきと考えているとの結果が出ています。自主的な取り組みだけで100%効果があるならば、こういった結果にならないはずです。

 規制によって完全な実効性を保障できるわけではありませんが、こういった状況を放置し、法律を整備しないとすれば、政治の不作為といわれても仕方ないでしょう。

状況は違えど、放置し続けて法律を整備しなかったのが、夫婦別姓問題。