ペンギン日記(旧akoblog)

identityやprivacyに関心を持つ大学教員のブログ。20歳の頃から「ペンギンみたい」と言われるのでペンギン日記。

ICT&Societal Challenge Workshop

土曜日は、ICT & Societal Challenge Workshopに参加。もとは、論文誌MIS Quaterly の特集号に出すための研究ブラッシュアップという位置づけだ。いわゆる学会発表と質疑というものではなく、参加者同士の議論、ガイダンス、そして10人ごとのグループで持ち寄ったpaperをRound Table形式でお互いに意見を言い合うというもの。

Workshopの始まりは、お互いの自己紹介から始まる。出来るだけいろんな人と話せとのことで、自己紹介と自分のテーマを話す。その後は、紙に "Social Challenge" か "Social Protest"か、どちらかのテーマの人を見つけたら書きとめ、さらにデータをどこの国でとったかを書き止め、たくさん書いた人には賞品というゲームだった。私のテーマ、「ソーシャルメディア利用者の死後」は、Social Concern ではあるが、Challengeではないのでは?とコメントをもらう。一方で、データ収集については、日本人が一人だったのでありがたがられた。

続いて、パネルと、論文執筆のガイダンス。研究設計について改めて復習する。社会科学の手法では、内的・外的妥当性や、分析単位をきちんと担保することが求められる。私は昨年度、事例研究のクラスを慶應の大学院で教えていたが、自分が研究者としてできているかを考えると、自省の機会になった。

そして、RoundTable。大学の教室にできるだけくっついて輪になって座って、順番に話していく。私のグループはヘルスケアや食の安全、ネット中毒といったトピックがまとまっていた。ヘルスケアに関しては、情報を実際に入力する人に着目した研究が2つ。1つは看護師のテクノストレス、2つめは途上国での情報入力について。医師よりも看護師の負荷はずっと高く、患者とも向かいあいながら、膨大なデータを間違いなく入力することがストレスにもなるし、その意味が分からなければ、データは不完全になる。情報化といっても、人力の部分に多く依存している状況が見えてきた。

私の「ソーシャルメディア利用者の死後」については、下記のコメントをもらった。

・まだSNSができてから10年程度。故人の情報の扱いに関するノウハウはまだ溜まってないのでは?
・誰かが亡くなると、Twitterのデータをまとめて落としてくるサービスもある。また、ソーシャル葬儀と称して、あちこちから故人に関するデータをまとめてくれるものもある。
・分析単位を意識しつつも、広くいろいろ見てはどうか。若い人の意識、年取った人の意識、国など。
・これは Social Challengeだと思う。亡くなった後もデータが残り続ける。それを誰が決めてどのように使っていくかは、新しい問題だ。

さて、これらを元に、RQを組み立てて調査設計を始めてみるか。今までになかなかなかった分野で、どのような理論レビューをするかでもがいていたが、同時並行で進めようという気になってきた。