ペンギン日記(旧akoblog)

identityやprivacyに関心を持つ大学教員のブログ。20歳の頃から「ペンギンみたい」と言われるのでペンギン日記。

アカデミアでのキャリアと生活のセッション

GHCのセッションは、Academic, Industry, Social Collaboration, Studentなど対象者別に分かれている。WLBについてのセッション。

"Are We in Balance Yet? Stories from Different Continents about Academia"

冒頭で示されたデータでは、研究者に占める女性の割合で、日本が最下位だった。1割程度。がっくり。。女性の研究者のキャリアの障壁になるのは、結婚と育児という。出産と育児のブランクだけではなく、結婚にも言及されたのは驚きだった。文化的な背景や制度の設計から、女性への負担が大きくなる傾向があるとのこと。

まずは米国の例の紹介。スタンフォードで学位を取得し、ご夫婦でミネアポリスで大学教員を務めている方のお話だった。大学でのキャリアパスは、Assistant Professor(助教/専任講師)から始まって、6年くらいでAssociate Professor(准教授)としてテニュアを取って昇進という。それまでのJunior Facultyに対しては、大学「投資している」という姿勢で、テニュアを持っている教員は「稼ぐ人」。その上で、産休は有給で、母親が6週(1ヶ月半)、父親が2週休めるとのこと。産前産後という分け方は無かった。産後だけだろうか?1993の法制定により、新生児の育児や看護が必要であれば、無給で12週(3ヶ月)休むことができるらしい。昇進に当たって、休んだことに対する考慮は一切無し。結果を出さなければならない。

次は欧州大陸より。オランダの大学教員の方から。無給の産休が最低3ヶ月、こどもが8歳になるまでに取れるとのこと。制度は国ごとの違い、オランダは4ヶ月の産休と2日の父親休暇、ノルウェーは全部で13ヶ月、父親は最低でも12週(3ヶ月)というパパクォータ。チェコは4年まで取れるそうだ。とは言っても、オランダで家庭と仕事の「両立」を問われるのは女性のみ。フルタイムの仕事をしてこどもを預けることは、とんでもないことだとされていて、6割の女性がパートタイムで働いているとか(男性では17%)。一方で、父親は、こどもを保育園に迎えに行くために、5時前に退勤。

最後は、欧州、米国、ブラジルと行き来しながら、学士、修士、博士、ポスドク、教員とキャリアを積んできた方のお話。まさに大陸を行き来している。ブラジルでは、有給で4ヶ月の産休が取れるが、父親は休めない。産休のブランクを埋める支援策もない。学内に保育所があるのはごくわずかで、預けられても3歳以上から。子育ては家族に頼るしかない。仕事は定時&フルタイムが基本なので、働きながらの子育ては困難。大学は勤務に裁量が効くのでまだマシとのことだった。

うーん、なかなか厳しい。日本の制度では、無給の産休が産前6週産後8週(あるいは6週)が取れて、1年以上勤務していれば、男女ともに1年の育児休暇が取れる。これはある意味恵まれているけれど、大学のキャリアと考えると、ちょうどポスドクや特任、任期つきのポジションにいるときが、適齢期(というか、産めるぎりぎり?)に重なってしまう。早生まれだと保育園に預けられない問題など、実際にはまだ問題がありそうだ。

会場の質疑もはいったパネルでは、「ある時期は、スローダウンすること」というコメントも出た。身体も戻らない、こどもも小さい、という時期はそういうものだと割り切ることも必要、という。今の立場までキャリアを積み重ねてきた彼女らの言葉には説得力があった。