ペンギン日記(旧akoblog)

identityやprivacyに関心を持つ大学教員のブログ。20歳の頃から「ペンギンみたい」と言われるのでペンギン日記。

ネット選挙の前に解決すべき3つの問題点

ついにネット選挙運動が解禁される見通しだ。今国会での改正がかなうかどうかはまだわからないが、選挙期間中も更新されないウェブサイトが掲示されている状況(むしろ間違いがあっても更新できない)を放置するくらいなら、ルール化した方が潔く、また水面下に落ちそうな問題への対処も早いだろう。

ネット選挙解禁へ協議機関=与野党時事通信
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2010042100347

さて、ここで対象になるのはホームページやブログ、と想定されているが、Twitterミニブログとして範囲内になるのだろうか。私は、敢えてTwitterを政治家や候補者が使うことの問題点を3つ挙げてみたい。

第一は、なりすまし問題だ。有名人がアカウントを作成した際、しばしば本物・偽物の問題が取り沙汰されるが、政治家や候補者の真正性はどのように担保するのか。Twitter社によって本人認証アカウント(Verified Account)にしてもらう方法はあるものの、誰もが認証されるわけではなく、一介の候補者がVerifiedのマークを取得することは困難だ。
これについては、例えば党や選挙管理委員会といった「オフィシャルサイト」との相互リンクを張ることによって解決できるだろう*1*2

第二は、リアルタイム性はそれだけで情報になる、ということだ。下の図を見ていただきたい。これはあるユーザがTwitterにpostしたという行為のみをプロットしたものだ。発言の中身も場所も書いていないが、だいたいいつ頃睡眠をとり食事をしているかが推測可能だ*3。なお、海外出張が続いたときには、これがずずずっとずれた。


iPhoneや携帯電話によってその場でその瞬間に投稿することは、時刻という情報を提供していることを意味する。敢えて後ろ向きなことを言うが、ポジションによっては、リアルタイム性を持った投稿をする・しないという行為自体が、セキュリティ問題となるだろう。むしろ、要職にある方は、バッチ処理の投稿や、時刻という情報にホワイトノイズを載せる(botが適当な時刻に投稿するなど)という工夫も必要かもしれない。

第三は、サーバの安定運用だ。DoS攻撃に耐えられるか。ポスターを破ると処罰されるが、サーバを落とした場合にはどうなるのか。ネットでの情報提供が選挙活動の一環として認められるならば、公平性という観点から、運用の安定性や冗長性の確保は不可欠だ。

以上の問題点を指摘したが、個人としてはネットでの選挙運動は進めるべきだと強く感じている。その裏には、2002年に筆者が衆議院議員選挙(民主党公認)で立候補した際、選挙期間中の誹謗中傷に対して一切反論の手段が無かったことへの悔しさもあると付記しておこう。そのとき、ウェブサイトを更新して候補者からのオフィシャル情報を発信することができたなら、ということを思い出す。

*1:非常にシンプルなことだが、Twitter上での本物・偽物騒ぎが起きる度に、相互リンクはどこまで確認されているのだろうかとは思う。。

*2:A.Orita and H.Hada "Is that really you?: an approach to assure identity without revealing real-name online" Proceedings of DIM2009

*3:http://www.xefer.com/twitter/