ペンギン日記(旧akoblog)

identityやprivacyに関心を持つ大学教員のブログ。20歳の頃から「ペンギンみたい」と言われるのでペンギン日記。

研究者が異分野で振る舞うこと

そもそもは、解体新ショーへの出演と、本ブログでのエントリ(http://d.hatena.ne.jp/oritako/20090116)を読んで、東京大学の北村さんが連絡を下さったことから始まった。彼女も共感覚を保持していて、共感覚を持つ研究者によってこのパネルを構成したいとお考えだった。そこで、慶應義塾での先輩、斉藤さんが「和音がすっぱい」などとおっしゃってたことを思い出し、ご紹介。

しかし、私の専門は共感覚とは何ら関係ない。

コメンテイターをお引き受けするに当たって、専門家ヅラをするのはやめようと決めた。別の分野を専門とする人間が、さも他の分野も専門家のようにふるまうのは、学問領域に対するおごりだと思う。もちろん、学問や研究の枠組みはある程度共有できているし、作法というものもいくらか汎用性はあるものだとは思うけれど。逆に、ここで自分がコメンテイターをする意味は、一つには共感覚者であると同時に研究者であること。つまり、自分の認識や知覚について、枠組みや作法で観察する経験があるということだ。もう一つには、私が乱読型の研究者であること。図書館の新着本を読みあさり、輪読会に参加し…という蓄積から何か役に立てることがあるかもしれない、と考えた。

実際、質疑とディスカッションの際に、自分の専門分野においてこだわっている「レイヤ構造」や「対立ではなく構造」という枠組みは大変役立った。その上で、私が愛読する以下の本を引きつつ、考えを深めることができたのは、大変貴重な経験だったと思う。

火星の人類学者―脳神経科医と7人の奇妙な患者 (ハヤカワ文庫NF)

火星の人類学者―脳神経科医と7人の奇妙な患者 (ハヤカワ文庫NF)

妻を帽子とまちがえた男 (サックス・コレクション)

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共感覚者の驚くべき日常―形を味わう人、色を聴く人

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