ペンギン日記(旧akoblog)

identityやprivacyに関心を持つ大学教員のブログ。20歳の頃から「ペンギンみたい」と言われるのでペンギン日記。

次へ行くための苦しみ

新しいテーマでの論文に着手しているが、正直とても苦戦している。昨年は概念整理ができたところにデータを取り、分析し、その結果を考察するというフェーズだったので割と論文を次々と書けたのだが、新しいテーマに行くときはこんなに苦しかっただろうかと思う。

博論では匿名性について取り組み、昨年はLinkedInとの共同プロジェクトで実名について取り組んだ。次は「名乗り」だ。実名か、匿名かという対立議論には答えがないと見えてきたので、もっとメタなidentityと、その表出について考えたいと思っている。

一つには、文化的な背景を含めた考察だ。
ふと源氏物語を読み返したりしているのだが、紫式部というのも実名ではなくて、いわゆる仮名(pseudonym)だったわけだ。百人一首を見ても、詠み手の名はいわゆる「コテハン」だ。こうした文化のある日本での特有の問題というのもあるのではないかというのが一つ。

もう一つは、なりすましという問題だ。これは明後日の情報処理学会EIP研究会でも報告するし、まさに今論文に着手している問題だ。問題を整理し、先行研究をレビューしながらもデータの取りづらさに悩む。幸い、協力してくれる方がいらっしゃるのでがんばってはいるけれど、問題のフレーム作りという苦しさを味わっている。