ペンギン日記(旧akoblog)

identityやprivacyに関心を持つ大学教員のブログ。20歳の頃から「ペンギンみたい」と言われるのでペンギン日記。

基調講演&村井先生の講演

冒頭には國領二郎先生のコメント。クラウドコンピューティングを例に問題提起をし、基調講演につないだ。
基調講演は、マイクロソフト米国本社法務本部、シニアバイスプレジデントのBrad Smith氏。以前あるところで講演をした際に女性客で満員になったが、それは「ブラッド・ピット」と間違えられていたからだった、というジョークから講演が始まった。
Smith氏は着目する3つの技術トレンドを紹介。第一にはますますパワフルになる端末についてだ。OSはもちろんのこと、テキストのインターフェイスからGUI(グラフィカル・ユーザ・インターフェイス)、そして今後はマウスもなくスクリーンに直接触れたり、ジェスチャーを関知したりするNUI(ナチュラル・ユーザ・インターフェイス)が実現するだろうと言う。第二には、大型化や軽量化、そしてさまざまなデバイスにディスプレイがつくだろうという予想。パソコンだけでなく、電話など、人は3つのスクリーンに取り囲まれるだろうと話した。第三には、クラウドコンピューティングだ。
続いて、日本の強みと弱みについて言及した。インフラストラクチャの強みを認めつつも、利活用は世界17位(世界経済フォーラム発表)と指摘。市場は世界中にあると述べて、海外企業との連携を訴えた。コンピュータと同様に互いにつながり、「島国」であってはならないと述べた。

続いて村井純先生が三田から遠隔参加。今から20年前の1989年が昭和から平成になった年であると同時に、日本のインターネットが開始した年だと前置きした上で、今後取り組むべきトピックを3つあげた。一つ目は、latency(遅延)の解決。地球規模(terrestrial)の情報処理に不可欠な要素だ。二つ目は、wirelessとspectrum(無線と帯域)の問題。モビリティに関わる部分だ。三つ目はセンサ。パソコン以外のものをインターネットに接続し、位置情報などを得る上で必要なものだ。これらによって、「リアルスペース」の連携が進んでいくという。さらに、村井先生は副題である「international」という単語にも言及し、法制度はnation(国)同士のものだが、インターネットはglobal、"Are we a part of global space?"と聴衆に問いかけた。

ところで、この村井先生が述べたTerrestrial Internetだが、2006年の情報社会学会の基調講演にてこのタイトルが用いられている。
(ちなみにこのときの記録者も私だ)

村井純慶應義塾大学)「Terrestrial Internet:光と電波と地球」

地球全体、空中も入れた自由な空間全体で、デジタル情報を自由にやりとりできるという意味で、「テレストリアルインターネット」という新しい言葉をタイトルに基調講演が行われた。
インターネットは、人間と知性の結びつきを変える基盤、人間のコミュニケーションが変わるという2つの役割を果たしているとして、デジタル化と無線、RFIDミャンマーでのインターネット教育、万博での遠隔地との合奏などが紹介された。
光の速度が133ミリ/sec。インタラクティブなコミュニケーションは260ミリ/secでで可能だということを考えると、「神様は地球を最初から人類がコミュニケーションできる大きさに作ってくれたのかなと思う」と言う。
光と言えば「光と影」と言うが、影を見えるようにするのがアカデミズムの役割。技術の進歩とあわせて、未来の課題を解決していける学会になるとよいと思う、と講演はしめくくられた。

情報社会学会第2回総会・シンポジウム
http://www.infosocio.org/general_meeting_2006May.html

クラウドという言葉が一般的に使われるようになったのは、確かに最近のことではあるが、3年前からこうしたコンセプトが描かれていたわけだ。