ペンギン日記(旧akoblog)

identityやprivacyに関心を持つ大学教員のブログ。20歳の頃から「ペンギンみたい」と言われるのでペンギン日記。

2009年3月の読書記録

今月は久々に心ゆくまで本を読んだ。研究費で購入した本、私費で買った本、そして図書館で借りた本など。通勤途中に夢中になって読み、急行電車に乗り換えずに各駅停車で帰ることしばし。いくつかpick upしてご紹介しよう。

まず、何よりもおもしろかった1冊。

心は実験できるか―20世紀心理学実験物語

心は実験できるか―20世紀心理学実験物語

専門書ではない。とはいえ、心理学を専門とした著者による本だ。一度は耳にしたような実験について、当時の背景、今の関係者のインタビュー、そして著者の家族との関係を交えながらドキュメンタリーとして書いている。ストーリーとしてもおもしろい。心理学になじみのない人でも十分に読める本だ。
ミルグラム実験の章で完全に引き込まれた。服従実験とも呼ばれるこの実験に参加した人へのインタビューまで敢行されているが、実験の際にまったく逆の反応をしたかれらのその後の人生に、実験という行為の重大性を思い知る。科学、特に認識科学の限界も。最終章の「ロボトミー」は、これから読む。以前からなぜそのような非人間的なことが行われ、ノーベル賞まで取ったのかどうしても疑問だったのだ。

勇気づけられる話もある。われわれが「予防注射」できるという話だ。ある場面で、ある行動(書きたいけどネタバレ?)を取らないようにするためには、自分がどのような行動を取りうるのかということを知ることが重要だという。何が弱いかを知っておくことの効果だ。

同じく心理実験の話では、こちらもお勧め。ただし、こちらは読み物としてはやや固い。

オオカミ少女はいなかった 心理学の神話をめぐる冒険

オオカミ少女はいなかった 心理学の神話をめぐる冒険

応用的な話では、これもおもしろい。電車の中で立ったままひたすら読み続けてしまった。

あなたはなぜ値札にダマされるのか?―不合理な意思決定にひそむスウェイの法則

あなたはなぜ値札にダマされるのか?―不合理な意思決定にひそむスウェイの法則

例えば、友人に引っ越しの手伝いを頼まれたとき。「1000円あげるから」と言われたら急に気持ちが萎えるのはなぜか。むしろはした金ならいらないのに。人が行う利他的な行為と、お金を得るといった快楽的な行為は、脳内で反応する部分も異なるそうだ。その他、さまざまな実験やゲームの結果と、実際の行為の考察が鮮やかで読みやすい。

最後に毛色の異なる一冊。この本をカバーもせずに電車の中で立ったまま読んでいたら、目の前に座った人が目を丸くして本の背表紙を見ていた。これからはカバーくらいはしようと思う。埋もれていた歴史の話。そして最後まで読むと、どこまでも交わらない「正しさ」に泣きたくなる。

ヒトラーの特攻隊――歴史に埋もれたドイツの「カミカゼ」たち

ヒトラーの特攻隊――歴史に埋もれたドイツの「カミカゼ」たち

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