ペンギン日記(旧akoblog)

identityやprivacyに関心を持つ大学教員のブログ。20歳の頃から「ペンギンみたい」と言われるのでペンギン日記。

「名前」の違い

Conference Dinnerはなんと21時開始。日本からくると早寝早起きになるのでそろそろ眠い。隣にはスリランカ人の女性(大学教授)、向かいにはバルセロナ在住の男性とカップル。名刺交換をしていると、バルセロナの男性の名刺が表と裏で違う。英語版では名前が一節足りないのだ。

「ああ、英語だと母の姓を省略しちゃってたんだね。僕も気づかなかった」とのこと。スペインでは、誰もが2つの姓を持っていて、父姓を第一、母姓を第二とするそうだ。ちなみに、どちらを第一にするかは自分で入れ替え可能。自分の子供には父母がそれぞれ第一姓を付与するけれど、父姓ばかりと言うわけではないらしい。パブロ・ルイス・ピカソも、ルイスが父の姓、ピカソが母の姓だ。実際、ピカソ美術館の展示でも、家族のことを表すのに「ルイス・ピカソ家は…」と書いてあった。そして当然、男女ともに結婚で姓は変わらないという。

私の名刺を渡しながら、私も名字を変えたくなかったので変えなかったと言ったら、「これは父の姓?」と聞かれた。maiden name と聞かれることはあったけれど、father's? と聞かれたのは初めてだ。夫婦別姓は認められていないので、unregisteredと答えたら、とても驚かれた。…というような話は別のブログに書くとして、

この一連の話から、名前というものの意味や名付け方という背景を抜きに、オンラインでの「名乗り」を研究しようとするのは、乱暴すぎたのではないかと気づいた。日本人は戸籍名を一つだけ持ち、父母の氏のどちらかだけを継承し、改姓したら旧姓は公式な名前としては使うことができない。とても名前に対して厳しい国だ。これに対して、氏のどちらを継承するかを自分で選択できたり、名前を聖書から取ったり、ニックネームの付け方が決まっていたりする国では、おのずと "screen name"の取り扱いは異なってくるのではないだろうか。そういう意味では、real identityをrepresentするために必要なのは、real nameなのかどうか。そもそもreal nameはひとつだけなのか、それとも何らかの省略を含むのか…など、研究すべき内容は多い。

余談。
スリランカ女性のお嬢さんの名前は「ヒロシ」。太陽、明るい子という意味だそうだ。バルセロナ男性のお嬢さんの名前は失念したが、意味はやはり太陽でまぶしい子。私の名前も明るい子だと言うと、「みんな同じ意味じゃん!」と大変に盛り上がった。