ペンギン日記(旧akoblog)

identityやprivacyに関心を持つ大学教員のブログ。20歳の頃から「ペンギンみたい」と言われるのでペンギン日記。

ムーニーCMを大学生に見せたら・・

本年度からの新設科目「インターネットと情報発信」にて、ムーニーCMはなぜ炎上したのか?と学生たちに聞いてみた。その結果を、ブログで公表してよいと言ってくれたので、記録しておきたい。20代の男女たちがどう感じたか、というものだ。

なお、授業では、子育てや家族を題材とするCMが、企業側の意図に反して炎上してしまう可能性があることや、価値観やライフスタイルが多様化し、かつ視聴者がネットで発信できる状況においてコンテンツを作る難しさについて説明した。さらに、他社のCMも数本見せている。他の動画と比較した上での感想である。

ムーニーから、はじめて子育てするママヘ贈る歌「moms don’t cry」
http://www.unicharm.co.jp/moony/cm/index.html

「自分は違和感を覚えなかったけれど・・」と前置きした上での炎上理由は次の通り。

  • 子育ての大変さを思い出して気分を害したから
  • 父親が出てこないところへの過剰反応があったから
  • シングルマザーを連想したから
  • 赤ちゃんが笑った表現がなかったから
  • 子育てに対しての考え方の違いから
  • 価値観の押しつけが炎上を招いたから
  • そもそも、ネットの普及で非難の声が大きくなりやすくなったから

「自分は違和感があった」と明記、あるいは特になにも書いていない炎上理由は次の通り。

  • 母親だけが家事育児をしている偏見のせい
  • 父親不在の点までリアリティを出し過ぎたから
  • リアルすぎて鬱になる可能性もあるから
  • 育児放棄を感じさせる表現があったから
  • 父親も子育てしている家庭もあるのに、母親だけの物語にしてしまったから
  • (応援する意図で)母親にフォーカスした結果、孤独に子育てをしていると受け取られたのではないか

実は、「母親だけ」や「父親不在」「父親も子育てしている家庭もあるのに・・」は男子学生たちの回答だ。応援のために母親だけを描いた結果、かえって孤独な子育てが浮き彫りになったという指摘も興味深い。

さらに、ムーニーのCMはどうすればよかったのかについても意見が出たが、いずれも父親の存在があればよかったのに、というものだった。

  • 夜泣きのシーンで、父親が隣に寝ていて一緒に対処していたり、ほかの場面でも父親の影があればよかった
  • 「思い出になる」というのなら、父母で助け合うシーンがあったらよいのでは。全てがいやなことではなく、幸せな部分もあるのではないか。
  • ワンオペではなく父親など家族で協力して育児するCMにすれば、家族愛も育まれるし子どもが欲しいと思う人も多いのでは

実は、私は学生たちは母親のワンオペ育児に違和感を持たないだろうと勝手に思っていたのだが、実際には当事者になり得るであろう女子学生だけでなく、男子学生も違和感を持ち、父親不在について指摘していた。そういえば今の大学生の親の世代は、均等法第一世代くらいだ。30歳で出産したとして、現在50歳(子は20歳)。それがどこまで影響あるかはわからないが、頼もしい兆しだ。

国際女性デーを初めて意識した

国際女性デーを意識したのは今年が初めてだ。朝日新聞のサイトのDear Girlsがきっかけだったと思う。掲載される様々な女性たちの記事を読み、共感したり、あるいは自分はちょっと違うなと改めて感じたりした。なお、こうした記事で違和感を覚えるのも大事だと思っている。女性は女性というだけで、皆同じ感覚を持っている訳ではないからだ。ただ、女性というだけで機会を奪われたり、プライドを傷つけられたりすることについては、同じ性別ゆえに理解できる感覚は大きい。

国際女性デー特集 Dear Girls
http://www.asahi.com/special/deargirls/

BuzzFeedの特集も読み応えがある。

https://www.buzzfeed.com/women2017

ところで、英語では男女の敬称が違う。私が10代の頃は、MissとMrs.を区別するのが一般的で、ようやくMsという既婚・未婚に関係ない敬称を目にするようになった頃だ。10年近く前に博士号を取ったとき、先輩の研究者の方からの言葉を今でも覚えている。「これで、Dr.と書ける。性別も未婚か既婚かも何もないよ。おめでとう。」その博士号を取ることができたのは、なぜだろうかと改めて振り返る。自分が頑張って成し遂げたという感覚は、むしろ少ない。機会を与え、その機会をつかむことを支援してくれた人達のおかげだと感じている。そして、博士課程への進学も、その後の研究の機会も、支援してくれた人達の多くは男性だった。「社会的に不利になりがちだからこそ、早く学位を取れ」という言葉も男性からもらったものだ。一方で、ロールモデルの多くは女性の先輩方でもあった。子どもを産んだら何もかも諦めなくちゃいけないのかという気持ちが浮かんだとき、「そんなことない!」と考え直せたのは先輩方のおかげだ。私は、次の世代にどんな貢献ができるだろうか。

「勉強しなさい」と初めて言われたのは、3歳の頃、曾祖母からだったと思う。曾祖母は一人娘の跡取り娘。大学に行きたい!と泣きながら訴え、家出までしたものの許されなかったけれど、結局師範学校には行かせてもらえたと言う。その後曾祖母は、三人兄弟の母になったが小学校の先生も続けていたようだ。祖父たち兄弟が学校でいたずらをすると、先生同士で伝わって、家に帰っても叱られたものだよと、祖父から聞いた話を覚えている。ひ孫娘は、曾祖母が行きたかったという大学で働き、曾祖母と同じく三人兄弟を育てている。「ひいおばあちゃん」として年齢を重ねた姿しか記憶にないが、彼女も私も同じように、娘から大人になって年齢を重ねていったのだと、今はとてもリアルに感じられる。同年代の曾祖母に会えたら、どんな話をできうるだろうか?と、考えてしまった。

2016年大晦日

あっというまの2016年でした。今年は、お世話になった方とのお別れが何度もありました。もうおられないんだ・・と思うときの寂しさを思い出します。一方で、第三子(三男)が生まれたのも大きな出来事でしたが、子どもたちのことを考えると、この世界はどうなっていくのだろうかと、予想ができないことも実感しました。

ソーシャルメディアの使い方を再考した年でもありました。「敢えて見ない」ということは、時には大切だし、うまくidentityを使い分けることも、自分を助けてくれる使い方になると感じました。このあたりは、専門領域でもありますが、一ユーザとして気づいた感覚も覚えておきたいと思っています。

来年もどうぞよろしくお願いします。


1月:センター試験監督から始まる2016年。そして第三子妊娠判明し、母子手帳よりも早く認可外の園長先生にご連絡して枠を押さえていただくも、4月からの新学科体制、昇格を考えてやや混乱。
2月:つわりは軽いが、別途体調悪化。どうにか入試業務を乗り越える。
3月:ゼミ2期生を送り出す。ゼミ生が功労賞を受賞。嬉しい。
4月:新学部・新学科スタート&准教授昇格。科研費も取れて嬉しいスタート。
5月:学部開設記念式典。私事ではチャイルドシート3つ積める車を購入。
6月:すぐる先生のお別れ会。ともかく寂しい。中央大学の夜の講義や、外部の講義など仕事を詰め込んでいた一ヶ月。Springerから、以前章を執筆した書籍が発刊された。
7月:学会発表1件。3か月の産休に向けて諸々整理。
8月:産休開始。真夏の臨月は暑くてたまらない。
9月:第三子(三男)出産。3時間眠ってくれる新生児で、体力的に助かった!
10月:3人の乳幼児がいる生活は、夫婦二人いてもオペレーションの工夫無しにはやっていけない。
11月:産休明けで仕事復帰。まずは授業を無事こなすことを最優先。
12月:生活のペースの中に研究時間を織り込む工夫を試しているところ。

  • 始めて良かったもの
    • おうちCOOP

第三子妊娠してから、週に1度宅配の生協を始めた。これは楽!解凍すれば食べられるものや、その都度使える冷凍食材で料理時間はぐっと短縮できた。

 研究目的で購入。データ収集のためにつけているが、明らかに意識して階段を上ったり、歩いたりするようになった。

  • イマイチだったもの

産休に入ってから試してみたけれど、読みたい本はなかなか見つからず、似非科学ぽい本が候補にあがるばかりだった。。

11月から復帰してます

11月1日から復帰し出講しています。
(10月末で産休は明けたのですが、学園祭休講等で出勤は1日からに)

英語2科目は先週引き継ぎで今週から講義、新科目「ソーシャル・メディア」は22日から講義開始です。

第三子は生後8週で保育園児に。上の子たちとは違う保育園なので、2つの園の送迎をしながら*1働きます。私が住んでいる横浜市では、兄弟同じ園に入園しようとすると「ランクアップと+4加点」という強力な兄弟加点があるのですが、次年度は兄弟加点で0歳入園でも確実とは言えないという話もあって、2月の保育園入所可否の結果をハラハラしながら待っています。

*1:第三子は認可外園へ。二箇所なので当面はワンオペは極力避ける体制です

産後休業中です

先日、第三子を出産しました。10月末まで産後休業をいただき(ちなみに産後「休暇」じゃなく「休業」です→ご参考:http://www.bosei-navi.go.jp/leave/)、11月から仕事に復帰する予定です*1。新学科の科目は、後半集中講義で対応。その他の科目は非常勤の先生とオムニバスということで、学期 1/3が終わったところでの復帰予定となりました。

三度の妊娠・出産を経てみると、いずれも経過が違っていました。第二子のときには授業を休講にするほど苦しんだつわりも、第三子のときは若干の味覚変化と眠気を感じたのみでした。第一子・第二子と妊娠後期から恥骨痛と腰痛で歩くのも激痛だったのが、第三子では産まれるまで痛みなくスタスタ歩いていました。第一子のときは、妊娠後期まで海外出張していたのですが、第二子、第三子では長距離移動は自重しました。妊娠中の体調は個人差どころか、母親は同じでも「中の人」によって全然違うので、「自分はできたから他人もできるはず」ということは全く当てはまりません。働ける人、動ける人、電車で立っていられる人もいる/時もありますが、その逆もあるわけで、一般化できることはないなあと感じました。

妊娠中の過ごし方は、宋美玄先生の本がとても参考になりました。あれもこれもダメ!だとストレスが溜まりますが、大丈夫なことも多いのです。例えば、カフェイン。私は普段の飲み物を麦茶にして、その代わりアイスコーヒーを飲んでました…が、飲みたいだけ飲んでも一日1〜2杯程度で牛乳入れて飲んでいたので、許容範囲内なわけです。

産婦人科医ママの妊娠・出産パーフェクトBOOK-プレ妊娠編から産後編まで! (専門医ママの本)

産婦人科医ママの妊娠・出産パーフェクトBOOK-プレ妊娠編から産後編まで! (専門医ママの本)

子育てのことは仕事とは別という意識があったのですが、一方でメディアリテラシーという観点から見ると、眉唾な情報がネットに溢れていて、睡眠不足でそれに振り回される産後すぐの母親・・という状況は気になっています。昨年書いた自分の記事を、改めて読み返したりしていました。

産後と似非科学
http://d.hatena.ne.jp/oritako/20150710

*1:上の子達もお世話になった認可外の保育園で受け入れてくれることになったのが有り難いことです

折田ゼミ3年生・LINEクリエイターズスタンプ発売されました!

7月14日、折田ゼミ3年生のグループが作ったクリエイターズスタンプ、無事に発売されました!

購入はこちらから。 https://store.line.me/stickershop/product/1298604/ja

春学期のゼミグループワークで「LINEスタンプを売る!」と意気込んでいた女子学生4人組。そもそもどんなスタンプなら使うんだろうか?と本学の学生たちにアンケートも取り、どういう場面で使うのか、文字は入った方がいいのかと検討を重ねてきました。絵も自分達で描き、それをスキャンし透過処理をし・・といったん完成したところで申請するも、最初は落ちてしまいましたが、再度修正して二度目のチャレンジで見事に審査を通過しました。

指導教員がペンギンに似ているが好きなので、ペンギンにしたとのこと。いろいろな場面で使えるように工夫されています。ぜひお使いください!

SpringerのService Science本に1章執筆しました

"MANGA-Case Training for Global Service Science" というタイトルで、1chapter執筆させていただいた本ができました!

下記から、chapter単位でも購入できます。マンガ教材と実践教育についてようやく英語でひとまとめしたもの。執筆してからは時間が経ってしまいましたが、ご覧いただければ幸いです。

Global Perspectives on Service Science: Japan
http://www.springer.com/jp/book/9781493935925